七瀬クンとの恋愛事情


「名取、倫子さんはっ?」

咄嗟に肩を掴み脇谷主任との間に顔を寄せて言うと、びっくりしたように二人顔を見上げてきた


「うわっ、女の敵が戻ってきたぁー」

すぐに絡んできた名取を無視して脇谷主任に聞いた

「松原主任は帰ったんですか?それとも…」


「松原ならちょっと前に……」

やっぱりすれ違ったか、急いで戻ってきたつもりだったけど、でもちょっと前ならまだ駅にいるかもしれない…

後を追うつもりで身体を翻すと、一瞬脇谷主任に腕を掴まれた

「ちょっと待て七瀬」


「あー、でも主任が帰っていった後すぐに高科課長が追いかけて行ってましたよぉ?」


名取がそう言うと、俺も脇谷主任も一旦振り向いて顔を見合わせた

「課長が?」

「うん。慌ててあの席から出て行ったの見てたもん。最後のお別れ?それとも再度チャレンジってやつですかねぇ?」

悠長にニコニコとそう言う名取に、脇谷主任も呆れて溜め息をついた

「よく見てるなぁ、お前」


「結構面白いんですよ、松原主任の恋愛下手事情って、見ててイライラしたりして
でもやっぱり予想通り七瀬さんが帰ってきたって事は、きっぱり古坂さんと別れて来たって事ですかぁ?」

「………うっ」

鋭い指摘に、一体なぜといった感じで眉をひそめる

「いきなり七瀬さんと別れたり高科課長と仲よさそうにしてたり、
七瀬さんだって今となってワザとらしく「古坂さんと付き合うから」なんって言ってきたりして、
あんなの全然恋愛してないじゃないですかぁ?
二人ともお互い未練タラタラで、見ていられなかったですって、本当ぉ〜っ」


人に指を指して詰め寄るように言いたいこと言って俺に絡む名取

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