七瀬クンとの恋愛事情
Last Spurt



「………はぁっ」

この時間、夜風がなくてもさすがに冬だ
飲んだ酔いが覚めていく

なんとなくその厳しさが心地よくてコンビニに寄ったりしながらゆっくり家路を歩く



「ん? えっ何?」

茂みからもそもそと動くものに恐々と近づくと、
判明したその姿に思わず手を出して抱き上げる


「子猫だぁ〜」

3、4カ月くらいのまだ小さい子猫だった

しゃがんで抱き上げている私のコンビニ袋をさぐりながら見上げてくるクリクリとした目


「可愛い、どうちたぁ〜?お前一人かぁニァ〜?」


つい、猫に赤ちゃん言葉や猫語(?)になってしまう

周りに母猫や兄弟猫もいないみたいだし、お腹が空いているのかしきりに見上げて小さな鳴き声を出す


「そっかそっかぁ、お前もひとりぼっちなんだニャぁ?一緒だニャぁ〜〜っ
ふふっ、私もひとりぼっちの野良人間だぞぉ〜」

なんて、すりすりと頭を撫でながら子猫に言ってみる




「……ぷっ、野良人間って」


「え?」


しゃがんだ私の真上から思い切り暗い影が出来て
聞き覚えのある声が耳から直接私の心臓を攻撃した

「………っ!?」

振り返っても声がだせないまま

彼の長い指が私の抱いている子猫まで伸びてきた


「どう見たって飼い猫でしょ?首輪見えないっスか?」

そう言って子猫の首にある小さな鈴の音を鳴らした


「えっ?首?ってあ、ほんと……だ」




私の前で片膝をつき子猫の顎下を擽ると、気持ち良さそうに顔を上げる
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