七瀬クンとの恋愛事情

思わず一気に言い返した

「そんなこと、わかってますよ。一緒にいたんだから」


「…………っ」


何なの、一体?!シレッとしてるし

いきなり現れて、勝手にコト進めて
危機感とか出会いとか言ってること訳わかんないし

挙句に何? バカにされてる?!

大体七瀬くん、古坂さんはどうしたのよっ


「……………」


「倫子さん?」

これ以上言い返す気分になれず、彼を無視して自宅マンションに方向を変え、大きめな歩幅で歩きだした


「おーいっ」


後ろからついてくるのが分かるから、より一層
めい一杯の速さで歩く


腕を振り上げ全身で早歩き、
いや、もはや走っていたはずなのに

後ろからの気配の距離は遠くなるどころか、ぴったり余裕で並走されている


「………ついてこないでよ」


「帰る方向が一緒なんで」


「違うでしょっ?! だって今日は古坂さんのところに……っ」

一瞬振り向いてそう言って途中でやめた
あの時七瀬くんは、私から彼女を庇って行ったのを思い出して


下を向いて私の足がゆっくり止まると同時に並走する長い足も止まる


「古坂のこと、気になります?」


「………別に、今は関係ないから」


そうだよ今は、七瀬くんは古坂さんの彼氏
私とは何の関係もない

そう思いながらも止まった足は動き出せない


「関係ないか…じゃあ、俺のひとり言ですけど」



すぐ後ろから低い七瀬くんの声が落ちてくる

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