七瀬クンとの恋愛事情


「倫子さんを諦めきれないまま、俺の小さなプライドが会社では平気なフリしたりして、
ずっと眠れないし酒をいくら飲んでも酔えないとか結局時間が経っていくだけだった…」



そんな、私は

古坂さんと付き合い始めた時だって、
「ほらやっぱりね」なんて思ってたりして


「あの日からおかしくなりそうだったんだ
……ねぇ倫子さん、だからもう触ってもいい?」


「え…?」


そう言われて顔を上げると、私の前にそっと手のひらを伸ばした



「さっき拒否されたのは、結構堪えた……」


子猫を持ってコンビニへ行く時、一瞬繋ぐことを躊躇した七瀬くんの手のひら

それにゆっくりと手を伸ばすと、繋いだ反対の指先が私の頰に触れてきて

くしゃりっと目尻が下がった顔が傾いた




「……ごめん、なんか女々しくて……でもなんで倫子さんが泣くの?」


「………っ」



わからない

気が付けば胸が苦しいほど痛くて、溢れだした涙をそのままに七瀬くんを見上げていると、
不器用な彼の人差し指にそっとその涙を拭われた



「だって、そんな風に思ってなかったから……ごめん、わたしが……っ」

すれ違ってる間、自分だけが傷ついてると思ってた


いきなり手を引かれ、そのまますっぽりと七瀬くんの胸の中におさまると、少し強めに抱き締められた



「好きだって言ってるのに、あと……俺はどうしたらいい?」


戸惑っているような七瀬くんの声に、私は
その背中にそっと手を回した
< 353 / 391 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop