七瀬クンとの恋愛事情

恥ずかしながらかろうじて出てきた私の呟くような言葉に、顔を近づけ目を細める



「………っ倫子さんと以外もうしない」


とても目を合わせられなくて、彼の背中に手を伸ばし胸の中に顔を埋めると、その上から私の頭をポンっと小突いた


「初めからそう言ってくれれたばよかったのに」


「………うっ」

抱きしめた私に応えるように腕を回してくれた


自宅マンションまであと数十メートルのこんな寒空の下、いくら夜だからとはいえいつまでもイチャついていい場所ではない


「帰ろう七瀬くん、風邪ひいちゃう」


さりげなく彼の手を引いた



「行っていいの?」

「ここまで来てて、追い返すわけないでしょ」


ああ、また私はどうしてこんなに可愛くない言い方をしてしまう

手を引いて繋ぎながらそう思い、マンションを上る階段の前で足を止めた



「……私が一緒にいたいのっ」


そう言ってみてそっと振り返ってみる


ニカっと笑った七瀬くんのその笑顔がやっぱり好きだなって思う







「……どうぞ」


「お邪魔します」

久しぶりに部屋へ七瀬くんを招きいれる

気恥ずかしくてすぐに、
「寒いからコーヒーいれよっか」とキッチンへ足を運びながらリビングのローテーブルに向かう七瀬くんに話しかける


「……….あ……」


「七瀬くん?」

返事のない彼が、ローテーブルに置いたままの漫画雑誌を手に取って複雑な表情をしている


「あっ!!それ、ちょっ……」
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