七瀬クンとの恋愛事情
それはもちろん…………
「2次元の俺じゃあ物足りなくなかった?」
「………え、あっ」
唇の先が触れるくらい近く彼の息がかかる
「寂しかった?」
低音で耳に響く声と一緒に優しく啄んでくる唇
それを受け入れると微かに触れる舌先を敏感に感じとった
「………ん……っ」
キッチンカウンターに押し付けられたまま身体を強く抱きしめられ、離れていく唇を目で追うと、七瀬くんの頭がくしゃりと私の肩に埋まる
「…………」
「…….七瀬くん?」
頭が凭れ掛かったまま何か含みを持たせながら抱きしめられている感じがして、ゆっくり顔を傾けた
「さっき俺言いかけたんだけど….…」
「ん?」
「ここに、高科課長が来たりしてた……?」
…はっ?高科課長?
ぐりぐりと強く顔を肩に埋められて表情を見せないままのその質問
本当に聞きたいの?
「ん…….来たよ、何度か送ってもらったから」
そう言った途端ギュッと彼の腕に力が入る
「玄関までは入らなかったけど」
「………玄関前、まで?」
さすがに高科課長のあの部屋を見て知っているのに自分の部屋なんて見せられるわけがない
正直そこまで課長に気を許せなかった
「そう、玄関前まで。部屋には入れてないよ、信じてくれる?」
「3ヶ月近く付き合ってたのに?」
私との話に顔を上げ突き合わせて少し疑うような七瀬くんにコクンッと頭を下げる
高科課長との付き合いがプラトニックな関係だったことを七瀬くんには言ってなかった