七瀬クンとの恋愛事情
「え、そこ?」
「……………」
まぁ確かにさっかの社長との会話に、立場的に入れなかったんだろうけど
「別に、社長の家だけど、奥さんである友達に会いに行くんだよ」
今更だけど二人目の妊娠もあるから全部ひっくるめての『おめでとう』が言いたい
「ダメなの?」
「違う……ダメとかじゃなくて、ただ…っ」
「ただ?」
「俺、今日結構頑張ったと思わない?なのに倫子さんはもう違うこと考えてるんだと思って」
口元を尖らせながらチラリとこっちを向いた
今日は自分のことだけのことを考えて欲しいって?
「ふふふっ」
わかってないなぁ、本当に
七瀬くんがいるから
七瀬くんでいっぱいになったから社長の事も綾子のことも高科課長のことだってわだかまりがなくなったんだから
「じゃあどうしたらその機嫌直してくれるの?」
道ゆく人から見ればこの身長差38㎝のカップルがどう見えるだろう
しっかりと繋いでくれる手にそんな思いまで麻痺しているのかもしれない
「一つだけお願い聞いてよ」
「一つだけ?」
自分から一つだけと言いながら、う〜んと考え込み首を傾げること数秒
ぶつぶつと一体どれだけの要求が頭の中に思い出されているんだ?
「じゃあ…さ」と口元を私の耳に持ってきてボソリと囁く
「名前で呼んで下の名前、しゅ・う・じって」
「えっ?!」
「俺年下だし、君付けとかで呼ぶ会社とは区別して呼ばれたい、今これから」
期待のこもったいっぱいの笑顔を見せながら私を覗き込む