七瀬クンとの恋愛事情
「調子に乗るなっ!」
「結構いまのは鳩尾にハマった………いてぇ」
そう言いながら身体をくの字に曲げ、私が退いたシングルベッドの上をひとり占領して、悪戯な顔を見せながらクスクスと笑う七瀬くん
ウェーブのかかった黒髪は見事にボサボサと広がって、うっすら顎髭もみえるのに、
なんか
まるで飼い慣らされた猫みたいに愛おしく思えて仕方がない
それでいて6歳も年下なのにあの広い胸の中で昨日は安心して眠ってたなんて
「………………」
ブンブンと頭を振り、邪な考えを打ち消して
くるりっと洗面所へ向きを変えた
「いただきます」
長い手の指を顔の前で合わせて合掌
姿勢良く背筋を伸ばしてお茶碗を持ち、目の前の鮭の塩焼きを箸できれいにほぐしながら口に運ぶ
少し熱いのが苦手なのか、お味噌汁にはふぅっと伺い啜る
「美味いですっ」
その笑顔でホッとした
だし巻き卵にも箸をつけて、それをひとくちで口いっぱいに頬張る七瀬くん
やっぱり男の子、朝から食欲あるなぁ………
「倫子さんっていつも朝からこんな風に自炊するんスか?」
「自炊は………一人暮らしって結構節約しないとやっていけないから」
でも、さすがに今日の朝ご飯は、見栄を張ってしまった