七瀬クンとの恋愛事情


「全然できないっス」

これまたハッキリスッキリ答えたもんだ
たぶんキッチンにも立ったことが無いんだろう


「あ、ラーメンくらいなら作れますよ」

うん、可愛らしい答えだ
さすが実家男子


「ふふっ、そんな感じだよね」


こうしてほのぼのと2人でキッチンに立っていると、昨日のドタバタが嘘のようだ

1ヶ月ちょっと豊田さんと付き合った内、そういえば平日以外は会っていなかったなぁ

会社帰りに食事を誘われて、それがイタリアンだったりちょっと高級な和食のお店だったり

休日に豊田さんとのんびり過ごすなんて想像、今にして思えばしてなかったような気がする


七瀬くんを玄関まで見送りながらそんなこと考えていた


「実家から帰るのは3連休最後の月曜ってこと?」


「うん、そうなるかな。いろいろありがとう」

総合的に考えたら助けてもらった訳で、いろいろ申し訳なかった

靴を履き終えて、一旦部屋側にいる私に振り返る
私は玄関の上がり框に立ち、少しだけ近くなった七瀬くんの顔を見上げた


「じゃあ、月曜に帰ったら連絡してよ」


「…………え、なんで?」


それは完全なる不意打ちだった

七瀬くんからのそんな要求に首を傾げると、
目の前にあったその顔がきれいに傾いて唇にストレートに落ちてきた


クチッと濡れたキスがまるで噛み付かれているような音をたてる


ゆっくり離れていく感触に固まったままの私
見開いた視界の中に彼の細めた瞳があった


「会いたいから」


低い声でそう言うと、身体を翻し玄関のドアを開けて出ていった

「…………へ」



はぁぁァァっ〜〜?!!!




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