七瀬クンとの恋愛事情



「………へぇっ、それはさぞかしのんびりしていたんでしょうね」




背後からの聞き覚えのある低い声に思わず肩を竦めた

「へっ?」

古坂さんと2人で並んで歩く私の頭上に影がかかり、同時に後ろを向いた

「休みボケですか? 松原主任、確かに顔も頭も緩んでるみたいっスね」


そう言って人の顔を覗き込んできたが、表情は冗談言ってるように思えない

「緩んでるって………」


「七瀬ぇ、おはようっ!」


古坂さんの顔が一瞬で乙女になった

会社では短大卒の古坂さんの方が七瀬くんより入社は2年先輩だけど、同じ歳だからってお互いタメ口で元々比較的仲がいい
思いきって彼女が告白して、それを振っても
「今まで通りでいい」と言って、彼女に変わりない笑顔を返している七瀬くん

この辺が彼の嫌われないと言うか、好かれるとこだろう


「おはよう、古坂」

あれ?
なんかさっきさり気なく私、ディスられた?


すかさず七瀬くんの隣を確保した古坂さん

「七瀬は、休み何してたの?」

可愛さ100%全開の古坂さんが、その瞳を輝かせて七瀬くんを見上げている

「別にこれと言って何も、ずっと溜まったビデオみたりゲームしたりDVD借りて見てたかな」


「なんだぁ、七瀬も暇だったんだぁ、じゃあ電話とかして飲みに誘えばよかったぁ〜。私一人暮らしだし」

振られた事は全然気にしないで、まだ本当に頑張るつもりなのね、古坂さん

私を通り過ぎて前を歩く七瀬くんの隣で花を咲かせながらついて歩いている

二人が並ぶとさすがに華やかで釣り合いも取れている


お似合いってこんな二人のこと言うんだろうなぁ
< 58 / 391 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop