七瀬クンとの恋愛事情
エレベーターの前で、次に1階に降りてくるのを待っていると、茫然としていた古坂さんが私の腕を掴んできた
「…………今までだって七瀬の彼女ってば続かなかったんです、だから………」
だから、まだ諦めたくないんだろう
私の目の前で古坂さんが身体を震わせていた
「……………そうだね」
25歳だもんね
『それでも待つ』だなんて、その努力出来る時間と意気込みが羨ましい
****
「ん………確かこの辺に、あっあったよコレ」
例の資料を七瀬くんと探しに資料室にきて、覚えのある場所を見ればあっさり見つかった
「こんな下の方にあったんですね、これじゃあ目に付きませんよ」
なんか、下の方って言い方に棘がある
「トラブルに関する資料はファイルが重たいし閲覧が多いから下に置いてあるって、説明しなかったっけ?」
「…………そうでした?」
目も合わせないし、態度が冷たく感じるのは気のせい?
棚からそのぶ厚いファイルの1つを引き出して私にドサッと渡してきた
「じゃあ、ちょっとコレ持っててください」
「え?」
重くてぶ厚くて、私には両手で抱え込まないと持てないファイル
「まだ何か探すの?あの、私これから会議があるから付き合っていられないんだけど………」
目の前で他に探す様子もない七瀬くんを、ファイルを持ったまま見上げた
「すぐ済ませます」
そう言ってズイッと一歩前に近づいてきた
「な、なに?」
見上げたまま思わず後ずさると、すぐ後ろの棚に背中が当たった