七瀬クンとの恋愛事情
会議に集中しなきゃいけないのに、頭に浮かぶ七瀬くんの視界いっばいの顔と、微かに触れて敏感に感じた唇の感覚
「はぁっ…………」
朝の会議を終えてデスクに戻れば、いつも通りの部署内の風景になんの変わりもない
少しスペースのある私の主任ブースの前に、縦列に並ぶ小ブースのデスク
その中にある1つに七瀬くんもいるが、
朝イチで作成された先週のシステムトラブルによる報告書は既に提出されていた
この時ばかりはさすがにこうして今、顔を晒さないで済む配置に感謝したい
「松原、お昼行かないの?」
ブースの上から声がかかるまで、
おまじないを口ずさむように頭をパソコンへと集中させ、デスクにかじりついていたら、昼の休憩を10分過ぎていた
「脇谷くん」
新婚の脇谷くんは、愛妻弁当のデスク飯
いつまでも席からパソコンを叩く音が止まない私のブースを覗きにやってきた
「急ぎの仕事か?」
「いや、でもお弁当が……あっ、脇谷くん」
忘れていた、この前の飲み会のお金
「金曜日のお金と、なんだか迷惑掛けたみたいで、みんなにも…………」
急いで財布を出したが、それを止められた
「ああいいよそんなのは、だってその歳で結婚のがしたんだろ?みんな同情してたよ、俺も含めて」
「…………え、あ………」
古坂さんといい脇谷くんといい、どこまで私の失恋説は流れているんだ
まあ、話を軽く 話して酔っ払って寝てた私が悪いんだけど