七瀬クンとの恋愛事情

「普通女性の一人暮らしって、もっとセキュリティの整ったところに住むもんじゃないっスか?」

「…………」

階段を上るすぐ後ろを、そう言いながらまだついてくる


「せめてインターフォンが1階にあるような…………」

「そんなとこ、月家賃がいくらかかるのよ」

このまま部屋まで着いていきそうな雰囲気に、階段の途中でピタリと足を止め、後ろの七瀬くんに振り返った

「案外堅実なんですね、もしかしていつかする結婚資金のために貯めこんでるとか?」


これだから実家男子は…………
さぞかし自分の自由に使えるお金があって、金銭感覚が麻痺してやがるんだろう

私なんて本当に生活費や交際費を極力切り詰めなきゃいけない毎日なのに

実家にたよる歳でもない

だから決して堅実じゃなく、これは生活術にすぎない


「それって、いくら後輩でもセクハラなんじゃない? ってか、本当大丈夫だから」


出来るかぎりの不機嫌を顔全体に表して、腰に手を当てて仁王立ちする

「倫子さんが部屋入って鍵しめてチェーンするのを確かめたら帰りますって」

全然私の態度に動じないし、笑みさえ浮かべてるし
そんな駄々っ子を仕方なくなだめるみたいに


一応私って、あなたの上司なんだけど?



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