七瀬クンとの恋愛事情
「きっと、この前の七瀬くんのおかげで豐田さんも諦めたと思うわ、だから……」
そう言っても鍵するまでついてくるみたいで、仕方なく3階の私の自宅まで一緒に行く
階段を上りきって角にある私の部屋に目を向けたところで、その玄関のドアの違和感に足を止めた
「…………何あれ?」
玄関のドアに何か紙が貼ってある
A4の用紙に赤字って、まるで借金取りみたいな内容で猟奇的な字体だけにゾッとする
【 くそビッチ女!デート代返せ 】
七瀬くんが私の前に出て行って、そのドアの紙を剥がしながら、溜め息をついてこっちに視線を移した
「中学生かよ、こんな嫌がらせ」
「……………」
豊田さんってこんな事する人だったんだ
敢えて今日これ貼りに、またここに来てたってことだよね
角部屋の周りに隠れる場所はないため、今彼がどこかに隠れている様子はなさそうだ
私の方を向いた七瀬くんに、止まったままなんとなくショックで動けなくて、とにかく首だけ振った
嫌がらせ………かぁ
「ハハッ、自業自得………ってやつだよね」
自嘲しながら片手を額にあてた
人に嫌われるって結構キツいなぁ……
七瀬くんが、剥がしたその紙を貰い受けて、それをクシャリと握り潰した
「豊田さんがコスプレ変態じゃなかったとしても、完全に私…あの人の上辺しか見てなかったって事だよね」
ぶつくさと、言い訳じみた事を
そんな事、七瀬くんに愚痴ったって仕方ないのに
たぶん、さっき七瀬くんに言われた
『つまんない女』って、アレ本当だよなぁ