七瀬クンとの恋愛事情
エレベーターが開くと、時間外通用口に一人待ち構えているように佇む女性が、顔を覗かせている
………あの子は、
確か向かいのカフェのカナちゃん?だっけ
私と一緒に出てきた七瀬くんを視線で捕らえている
「七瀬さんっ」
その声に私も彼を見上げると、彼女に気づいた時点で足を止めていた
決してご機嫌な状況でないって事は、私でもわかる
眉を歪ませて、落胆するような溜め息をついた
「なにやってんの?」
普段の七瀬くんの女の子に対しての対応とはまるで違う、言うなればこの間の豊田さんに対して話している時のような低い声だ
「………………」
私の肩に手を回して押しながら、急に足早に彼女から通り過ぎようとする七瀬くん
「待って!」
着ているスーツの背中をタイミングよく捕まえられると、すぐにそれを振りほどくように彼女の方へ振り返った
「なに?」
「あのね、会社の人に聞いたの彼女が出来たって、本当?」
私の目の前で、なんとも言えない痴話喧嘩が始まった
高科課長が言ってたのはコレかぁ………
でも、なんだか風向きが違う
「だったら?ってかそうやって人のことさぐるのやめてくれないか?」