七瀬クンとの恋愛事情
彼女が会社の向かいのカフェでいつから働いているのかは分からないけど、確か少なくともここ2年くらいはいるはず
その間に似たようなトラブルはなかったのだろうか
それにしたって、彼女の様子を近くで知る一人であるはずの店長なら、なんらかの性格の歪みを知っているかも
「一度話してみたら?七瀬くんは一応あそこの客な訳だし、写真だって店で隠し撮りされたものもあったみたいだし」
「…………」
「七瀬くん?」
なんかキラキラした目を見開いてこっちを向いたまま黙っている七瀬くん
「………思い付かなかった、そうか」
呟く様に言うな否やその場を立ち上がり、
「ちょっと行ってくる」なんて言い出すから、すかさずそのスーツの裾を掴んだ
「待って待って、もう終わってるって!」
「あ………」
時刻は既に9時近い
確か【ふぇると】は、午後8時までだ
「思い経ったからからって、いきなり行ってちゃんと説明出来るの?撮られた写メや、いつからいつまで何をされてたか、まとめて置かないとまた誤解されるよ?」
こっちの話を100%信じてくれるとは限らないんだから話すならあらかじめ段取りが必要だ
「あ………はい」
一旦落ち着いて、ストンと元の椅子に腰を下ろした
まるで「待て」を言われたワンコみたい