七瀬クンとの恋愛事情

「違うの?」


「お願いだから、黙って」

目頭を押さえ込んで、カウンターテーブルに沈み込んだ


朝七瀬くんが言った言葉に翻弄させられて
どうも大きな誤解をしていたようだ


ああ……私、結構あの『なんか、ごめん』ってのに傷ついていたみたいだ


「倫子さん?」


「もういいから………」

このまま終わらせよう、こんなフザケた関係
絶対にこの先彼にブンブンに振り回されるに決まってる

半分以上残った2杯目のジョッキビールを一気に飲み干した

「もう帰ろう」



会計を済ませて、駅の改札口へ


「で、倫子さんの予定は?」

「……あ?」

家の方向の改札を通る私に、七瀬くんが目を細めて見下ろしながら一緒にホームに向かう


「やっぱりうそなんだ、傷つくなぁ」

「…………」

電車が来るまであと5分
平日の割には騒然としているホーム


「一体なんの罰ゲームよ………」


「ん?」

私の声が聞き取れなくて耳元を寄せてきた七瀬くんを見上げた

「わざわざ30過ぎて婚活に失敗した女なんかよりもっといるでしょ?体力があって可愛いくて君に夢中になれる子が」

君なら選びたい遊びたい放題だろうに


「倫子さんは、結婚したいの?」


「…………」

そうゆう訳じゃないけど、
そうゆう年なのよ


< 94 / 391 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop