七瀬クンとの恋愛事情
「違うの?」
「お願いだから、黙って」
目頭を押さえ込んで、カウンターテーブルに沈み込んだ
朝七瀬くんが言った言葉に翻弄させられて
どうも大きな誤解をしていたようだ
ああ……私、結構あの『なんか、ごめん』ってのに傷ついていたみたいだ
「倫子さん?」
「もういいから………」
このまま終わらせよう、こんなフザケた関係
絶対にこの先彼にブンブンに振り回されるに決まってる
半分以上残った2杯目のジョッキビールを一気に飲み干した
「もう帰ろう」
会計を済ませて、駅の改札口へ
「で、倫子さんの予定は?」
「……あ?」
家の方向の改札を通る私に、七瀬くんが目を細めて見下ろしながら一緒にホームに向かう
「やっぱりうそなんだ、傷つくなぁ」
「…………」
電車が来るまであと5分
平日の割には騒然としているホーム
「一体なんの罰ゲームよ………」
「ん?」
私の声が聞き取れなくて耳元を寄せてきた七瀬くんを見上げた
「わざわざ30過ぎて婚活に失敗した女なんかよりもっといるでしょ?体力があって可愛いくて君に夢中になれる子が」
君なら選びたい遊びたい放題だろうに
「倫子さんは、結婚したいの?」
「…………」
そうゆう訳じゃないけど、
そうゆう年なのよ