七瀬クンとの恋愛事情

到着した方向の電車に乗り込んで、扉口の近くに凭れかかった
その横で同じように並んで立っている七瀬くん


「あっ、そういえばコレ」


その体勢のままでゴソゴソと自分のジャケットのポケットを探り始めた七瀬くん

取り出したのはファンシーショップの小さな包装袋

「なに?」

私の手の中に「はい、プレゼント」と渡された

「昨日倫子さんの仕事終わる前に、本屋のレジ前に並んでたのを目に付いて買ってきた」

「これ………香水?」

中高生向けの可愛らしい小瓶
きっと、売れ筋をご紹介コーナーみたいな
受験に対してのアロマ的なものだろう

フルーツ系の甘酸っぱい香り


「たまたま『勉強疲れの貴女に』って書いてあったから」

「え、七瀬くんが買ったの」

明らかに女子用の香水を?


「………いいの?貰って」

「倫子さんに買ってきたものだから」

渡されるままそれを受け取ると、七瀬くんが少し屈んで私の耳元まで降りてきた

「香水のプレゼントって、ある意味男の独占欲みたいなものだって知ってた?」


「へ?」

「俺の好きな匂い、倫子さんに付けてて欲しいなって
勿論いつものシャンプーか柔軟剤の匂いも好きですけど」

「……………」



私は
君にとって一体何なんだろう



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