七瀬クンとの恋愛事情
名取さんが七瀬くんを捜している手間を考えたら気の毒だし
「後から七瀬くんに言っておくから、それ私がやっとこうか?」
親切心で書類を貰い受けようと手を出したが、すぐにその書類を引っ込められた
「結構です。これは七瀬さんに頼まれた私の仕事ですから」
「え………?」
「もう一度デスクに戻ってみます」と、身体を翻し部署の方へ戻っていった
あれ……? 私何か悪いことしたのかな?
私も部署に戻るため、彼女の後に続いて歩き出すと、
通り過ぎた小会議室の扉が「カチャッ」と開いたのに気がついて振り向いた瞬間
「!!」
強い力に腕を引かれ、扉の内側に引っ張り込まれた
「んぅっ!!」
声を出そうにも頭の後ろから口を押さえられ、
身動きさえ出来ない
「しっ……倫子さん、俺」
ん?
聞き覚えのある声に、そのまま後ろに視線を上げる
「七瀬くん……? 何やってるの?」
押さえられた手から解放されバツの悪そうに扉の外の廊下を気にする七瀬くん
「もしかして………名取さん?」
はぁっ、と肩を落として溜め息をついた
「しつこいんだよあの子、ちょっとした事でもすぐにデスクまで来て、挙句に余計な話までしだして、周りのデスクの先輩に煩いって叱られるし」
つくづく困っている様子だ
「余計な話って?」