海に降る雨
「ありがとう。もう大丈夫」


 雅人に笑顔を作って向ける。

 泣き笑いの顔になっているだろう。


「化粧直したほうがいいぞ。不細工になってるぞ」

「うるさいわね。言われなくても、わかっているわよ」


 化粧ポーチをバックから出して、化粧を直した。

 赤くなった鼻は化粧でカバーできないけど。


「雨、小降りになったみたいだな」


 外を見ると先程よりも雨粒が小さくなってきていた。


「いろいろありがとうね」

「いいよ、別に。これからもお前とはいい友人でいたいからさ」


 いい友人、ね。

 胸の中の思いは今は封印してしまおう。

 いつか伝えられる時が来るまでは。



 海に降る雨

 あたしの思いはこの雨には流さない

 海のようにこの胸の中に溜めておこう

 いつかそのときが来るまで

 
 Fin
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