海に降る雨
 理由は知られたくない。

 言えるはずもない。

 本当のことは。


「で、どうなんだよ?明日の都合は」

「時間ならたっぷりあるわよ。独り身に戻ったし」

「気晴らしに出かけるか?」

「陽子も誘って?」

「いや、陽子に聞いたら、明日は用事があるらしくてさ。だから、二人だけなんだけどさ」


 二人だけ?

 その言葉にドキッとする。


「どうした?」

「ううん、何でもないよ」


 知られてはいけない。

 動揺した気持ちを。


「明日、天気どうだったかな?」

「天気予報、見てないからわからないけれど」

「車なら雨でもドライブくらいはできるしな」

「そうだね」


 待ち合わせの時間と場所を決めて、電話を切った。

 胸がまだドキドキしている。

 明日会って、普通の顔ができるだろうか。
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