海に降る雨
 人通りの多い駅前。

 7月の最初の土曜日。

 梅雨明けはまだ。

 空は曇り空。


「待ったか?」

「ううん。大丈夫」


 待ち合わせ時間よりも早く現れた雅人。

 きっと彼女が出来たら、こうなんだろうなぁとか想像してしまう。


「雨、降るかな。俺、傘を持ってきていないけど」

「私もだよ。でも天気予報では0%になっていたけどね」

「それなら平気だろう」


 雅人の隣の助手席に座った。


「どこに行こうか?リクエストとかあるか?」

「そうだな、水族館に行きたいかな」

「水族館かぁ。俺は行くのは久しぶりだなぁ」


 車が走り出した。

 ラジオからはFMが流れている。


『今日の歌の特集は夏の恋をテーマにお送りします。いま恋をしている人も、これから恋をしようとしている人も、自分に合った曲のリクエストをお待ちしています』


 なんという偶然。

 でも、失恋という言葉が出てきてないことだけはいいとすべきか。
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