海に降る雨
 曇り空で地平線が霞んで見える。

 先程つかまれた腕が熱い。

 ドキドキが止まらない胸。

 隣にいる雅人に聞こえているような気がする。

 顔が上げられない。

 窓の外に見える海。

 雨が海に降り注いでいる。

 泣きたい気分になる。

 でも、泣けない。


「俺、見ない振りしているから、泣いてもいいよ」

「え?」

「涙は雨のせいだと思えばいい」


 気づかれている。

 泣けないことを。


「・・・そうだね」


 目を閉じた。

 泣きたい理由は別れた彼のせいじゃない。

 隣にいる友人のせい。

 静かに声を上げずに泣いた。
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