Real Emotion
醒めたら一気に戻ってくるものが理性と羞恥心だ。
こんな場所でこんな風に抱かれるなんて
いくら激情にかられてしまったとはいえ、さすがに居た堪れなくなった。
縛られた腕を解くのを急かし、私は身繕いの為に
部屋の隅にある衝立の陰に駆け込んだ。
衝立の向こうで 「今更照れることは無いだろう」 と笑う久野の声がした。
今更でも照れるものは照れるし恥ずかしいものは恥ずかしい。
女心を分かってないというか何と言うか・・・。
背徳感と後悔に苛まれながら裂かれた下着とストッキングを足から剥がし
乱雑に丸めてバックに入れ、大きくため息をついた。
こんな事になったのも、あんなに感じてしまったのも全部全部恥ずかしい。
「もぅ・・・」
もう一度大きなため息を落として、乱れた髪とメイクを簡単に直し、そこから出た。
すでに身なりを整えて私を待ち構えていた久野の
食事に行こうという誘いを断った。
見た目には分からないが、下着をつけていないから何とも落ち着かない。
こんな状態で食事を楽しむ余裕などあるわけがない。
そう正直に話すと、彼は声を上げて笑った。
「気持ちはわからないでもないな。今日は送ろう。食事はまた今度」
「はい。そうして」
「でもスリルはありそうだぞ」
「そんなスリルは要らないから!」
「慎重派なんだな」
「それが普通よ。一体私を何だと思っているの?!」
「ん? 誰よりも愛しい俺の女、だと思っている」
「そんな事、真顔で言うかな・・・」
「いけないか?」
もう降参。この人には何をしてもきっと勝てない。
「Up to you!」
大変結構、と笑った久野に肩を抱かれて私達は歩き出した。
end