誰かの一番になれない
生まれた時から決まっていることというのはいくつかあると思う。
例えば才能。
例えば得意なこと苦手なこと。好きになるタイプ嫌いになるタイプ。
どうしても受け付けないもの、どうしても好きになってしまうもの。
私はおそらく生まれた時から誰かの一番になれないように決まっていたのだと思う。
私には兄がいる。
両親から一心に愛情を受けて育っていた。
両方の祖父母にとって初孫の彼はその愛情も独り占めだった。
容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群。
性格もよく、幼い頃から色んな人にモテた。
ずっと一人っ子だった兄に、想定外でこの世に生を受けたのが私。
容姿も成績も運動神経も、兄と較べるとなにもかも劣る。それが私。
性格も愛想もよくない、それが私。
どんなにがんばっても一番にはなれなかった。
家庭では兄に負け、学校では誰かしら私の前に立ちはだかる人間がいた。
そして、それは恋愛でも同じだった。
愛してほしい人の一番にはいつもなれなかった。
どうしてこんなにも誰かの一番になることが難しいのだろうか。
世の中には相思相愛の人間や自分の一番欲しいものをいとも簡単に手に入れている人間がいるにもかかわらず。
どうしてなんだろうか。
いつしか私は一番になることをあきらめた。