ヒミツにふれて、ふれさせて。
プロローグ!







その日はいつものように、呼ばれるがままに彼の家に向かっていた。

わたしの家から電車で3駅。長谷駅から江ノ島電鉄に乗って鎌倉駅まで行く。そこから15分くらい歩けば、ようやく見慣れた風景が見えてくる。


『暇だから来いよ』


淡白なメールが届いたのは朝の8時。メールに気づいたのは10時だった。大体、休日なんて普通にお昼前まで寝てるし。

だから、溜まりに溜まった着信履歴を見ると、フツフツと焦りが湧き上がってくる。

…でも、何も言わずに、何も怒らずに大人しく電車に乗っているのは、きっとなんだかんだ、この人のことが好きだから。

わたしには、この人しかいないと、心のどこかで思っているから。そして、この人にもわたししかいないと、勝手に思っているからだと思う。


『お前、今どこにいんの?』


近くのコンビニに寄って飲み物を買っていたら、15件めの着信が入った。これを無視すると、またきっと何度もかけてくるのだろうと思って、大人しく通話ボタンを押した。

そしたら、いつものように、少し苛ついた声が聞こえてくる。





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