ヒミツにふれて、ふれさせて。
「…ごめんなさい…」
でも、意図して連絡しなかったわけじゃない。できなかったんだ。そんな余裕なかった。
「…もういいわよ。それより、何があったの?話して」
「——…っ」
「めご?」
…だから。そんな余裕なかったって言ってるじゃん。今もないに決まってるじゃん。どうしてこんなことを聞くの、この人は。
まだ、瀬名にだって話してないのに。
「——っ」
——くるしい。
「…。とりあえず、帰りましょう。アンタの家の最寄りって、長谷駅だったわよね」
「…」
言葉もなく、コクリと頷く。でも、わたしの気持ちを察してくれたのか、珠理はそれ以上詮索するわけでもなく、黙ってわたしの隣にいてくれた。
江ノ島電鉄に乗り換えて、長谷駅を目指す。到着して駅を降りると、そこは平日にも関わらず観光を終えた人たちで溢れかえっていた。
その人たちの合間を縫うように、わたしは珠理と一緒に歩いて。
駅から少し離れた家を目指していく。
「…相変わらず、ここは人が多いわね」
「……大仏、あるから…」
「そっか。なるほどね」
わたしの家は、あの有名な鎌倉の大仏がある高徳院とは真逆にある。だから、ある程度の距離を縫って歩けばそのうち人だかりは落ち着くのだけれど、それでも毎回通るたびに疲れてしまう。
…というか、手。
さっき繋がれていた手を、このオネェは離さずに握っていて。
電車に乗る時も、乗った後も、ずっと繋いでいる。
さすがに改札を出るときは離れていったけれど、そのあとすぐに、指を絡められた。
…はぐれないようにって、ことなんだろうけど。
それでもやっぱり、少しだけ意識してしまう。