ヒミツにふれて、ふれさせて。


「…めご」


しばらく歩いていると、珠理がわたしの名前を呼んだ。

手は、相変わらず繋がれたまま。その小指に、少しだけ力が入ったのがわかる。

それを合図に顔を上げると、その切れ長だけど美しい目は、わたしを映していて。


「…ちょっと、帰る前に寄り道しましょ。いい?」


その目が、少し哀しそうに揺れるものだから、わたしも嫌だとは言えなかった。



・・・


——近くの公園に着いた。わたしの家から歩いてほんの少しのところで、小さい頃からもよく遊んでいた場所。

そこに今、珠理と2人で来ているってことが、なんだか変な感じ。




「っああー!ずいぶんと歩いたわね〜」


公園に着くなり、珠理は木製のベンチに寝転ぶような勢いで倒れこんだ。

そういえば、ハニーブロッサムからウチまでって、結構な距離と時間を要するんだよね。今まではあまり感じなかったけれど、距離的にはかなりある。

そこをあんなに全力の早歩きで歩いて来たんだから、疲れないわけがない。


「めごも、来なさいよ。こっち」

「…」


するり、と、繋いでいた手はカタチを変えて、わたしの手に添えられた。

珠理の大きな手が、優しくキュッと触れている。さっきまで強引に引っ張っていた手と同じとは思えない。


「…珠理」

「…ん?」


座る前に、言っておかなくちゃ。あとから、色々と聞かれたら、それこそ答えたくなくなってしまいそうで。

さっきのような感情が、また、湧いて来そうで。

ここまで心配してくれている人に、何も言えなくなってしまう前に。




「…わたし、リョウちゃんと、サヨナラしてきたの」



悪い芽は、今のうちに摘んでおこう。

わたしから言ってしまえばいい。何もかも。そしたら珠理から、変な詮索も来ないはず。


「…ん、気づいてた」

「…っ」

「…めご、座って。おいで」



—— “気づいてた” って、言われるんだろうなっていうのを、気づいてた。

珠理はカンもいいし、わたしのことについては全てを見透かしてきたから、きっと今回のことも察していたんだろうなって。

別れたことはともかく、わたしに何かあったってことは気づいていた。きっと。

そうじゃなければ、あんなメッセージを、わざわざ瀬名にアカウント聞いてまで送ってこない。


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