ヒミツにふれて、ふれさせて。
「おいで」って言ってくれたのに、わたしの身体は動かなくて、珠理に手を繋がれたまま立ち尽くしてしまう。
「…めご?」
泣きたいわけじゃない。何を言いたいわけでもないし、この人に言ってもらいたいわけでもない。
もう、じゅうぶんだ。オジサンにも、色々聞いてもらったし、アドバイスも貰った。
これ以上、わたしは何を考えているの。
「めご、」
「…」
まるで、何度聞いてもらっても、埋まらないようなポッカリと空いた何か。
きっと、今までリョウちゃんがすみついていた、何かが。
…わたしには、足りなくて。
「———…」
立ち上がった珠理を、押し返す力はなかった。
押し返すつもりもなかった、という方が、正しいのかもしれない。
「…めご」
気がついたら、珠理の声が今までで一番近くで響いた。
…何もかも、違う。体温も、身長も、匂いも、力も。
リョウちゃんとは、まるで違う。
「…っ、わたし、最低…」
まるで違うのに、どうしてわたしは、抱きしめられたこの腕に縋るように、泣いているのだろう。
この人は、リョウちゃんじゃない。
それどころか、他に忘れられない人がいる、ただの友達。
そんな人に慰められている自分が、ものすごくずるい人に思えてくる。
「…最低じゃない」
「最低…だよ。ごめんなさい…」
誰に対しての、“ごめんなさい”なのか。そんなことも、よく分からないのに。
さみしくて、さみしくて、どうにもならないくらい、くるしい。