ヒミツにふれて、ふれさせて。


「…めご。今はきっと、色々なことを考えてしまってくるしいと思う。つらいと思う…。でも、わたしは稜太くんがしてくれたことは、間違っていないと思うんだ」

「…うん…」

「稜太くんが、ちゃんとめごのことを分かっていてくれてよかった。めごがくるしいこと、ちゃんと分かってくれていて、よかったんだよ。離れたのは、本当に稜太くんのやさしさだったんだと、思う」

「…っ、うん」


瀬名が、声を震わせてそんなことを言うから、わたしもまた、目の奥がジンと痺れて来た。

…瀬名に、そう言ってもらえてよかった。わたしたちが選択した道が、間違っていないって言ってもらえて、よかった。

くるしい想いをしても、離れることを選んでよかったんだ。


「大丈夫だよ、めご。大丈夫。わたしもいる。昨日は、ミノくんだって心配して、急いでわたしのところに来たんだよ。オーミくんだって」

「…っ!」

「…、めご?」


突然出て来た、“ミノくん” というワードに、少しだけ身体がビクッと跳ねた。

…昨日、珠理と色々あったってことを、ついつい思い出してしまって。


「めご?どうしたの」

「…いや、」


…昨日は、あれからすぐにわたしの家まで送ってくれて、そのままバイバイした。

何も言わなかったし、言われなかった。確かにあのオネェ野郎には抱きしめられた…と、思うけど、本人はわりとケロリとしていて。

多少、違和感はあったけど、いつも通りの珠理のまま帰っていった。


…でも、わたしはそれよりも気になっていることがあって。


「…昨日、珠理とハニーブロッサムで会ったの」

「えっ?珠理くんと?偶然で?ハニーブロッサムって確か、めごが好きなケーキ屋さんだよね」

「うん、そお」


—— なぜ、珠理はあそこにいたのか。

そればかりが、帰ってからも頭の中をぐるぐると回っていて、今もなお、それは終了してくれない。



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