ヒミツにふれて、ふれさせて。
考えても考えても分からない。本人に聞けばいい話なんだろうけど、話してくれなかったのを考えたら、あまり知られたくなかったのかなとも思ってしまって。
「あ、もう先生来ちゃうね。瀬名ありがとう。わたしちょっとトイレ済ませてくるよ」
「うん!じゃあまたあとで話そ!」
「ん」
…トイレに行きながらも、考えてしまうけど。やっぱり、知らないふりをするのがいいのかなあ。
「…あ、」
登校する人たちが溢れかえる廊下を歩いている途中、わたしは人ごみの中に揺れるツインテールを発見した。
…あれは、きっと茶々ちゃんだ。E組にいる。きっとまた珠理にちょっかい出しに来たのかな。ほんと、懲りないというかなんというか。
「珠理、また来るからねぇ〜!」
甲高い声。よくもまぁ毎日毎日、あのオネェのために。朝からご苦労なこってすな。
思わず感心してしまいそうになりながら、その光景を見ていた。
ただ、どうやらわたしは見すぎてしまっていたらしい。そのツインテールは次の瞬間、振り返って、わたしの方を噛みつくような目で見ていた。
「桜井芽瑚!!!」
げっ。
「あんたまた珠理のところに来たの?!毎回毎回、ほんと懲りないわね!!」
…いやいや、それはこちらのセリフです。
うわー、別にそういうわけじゃないしトイレに行く途中だっただけなのに。最悪だ。
目を合わせちゃいけない人ナンバーワンなのに、油断していた。
「いや、違うってば。わたしはただトイレに行こうと………」
——— あ。
思わず、言葉が止まった。「何よ?」と睨んでいるこの美少女を見て、ふと考えが浮かぶ。
…この子、珠理と中学の時付き合ってたことがあったんだよね?今はフラれてしまったって言ってたけど、茶々ちゃんなら、珠理のこと詳しく知ってたり…するのかな。