ヒミツにふれて、ふれさせて。
「…茶々ちゃん。ちょっとコッチきて」
「はっ?なに?きもいんですけど!」
もう、完全に好奇心。それは感じていた。でも、どうしても気になって仕方ない。妙な空気を出されたら、詮索するのはやめておこう。
うん、そうしよう。それなら、大丈夫な気がする。
茶々ちゃんを、近くの渡り廊下に連れて行った。珠理たちが付いてきていないかだけを注意して周りを見渡す。
「ちょっと、何その動き…ほんときもいんですけど」
「しーっ。ごめんってば。ちょっと聞きたいことがあるの」
「はー?なにー?」
せっかく美しい顔をお持ちなのに、それをヒン曲げたような表情でわたしを見る茶々ちゃん。
残念極まりないよ…。いや、変顔しても美人は美人なんだけどさ。
てか、ほんとに珠理とお似合いすぎ。絵になるどころじゃないでしょ。好きな人がいたとはいえ、どうして別れちゃったんだ美濃珠理…。
…って、そんなことはどーでもよくて。
「あのさ…、珠理って、珠理の実家って、お店やってたり…する…?」
少しだけ、ドキドキする胸を抑えて、出来るだけ平然と聞いた。この子には感情を隠していかないと、なんでも見透かされてしまいそうだから。
「は?なに?珠理がお店やってたらなんだっていうの?」
…はい、出た。素直に答えてくれない。まぁ予想はしてたけどね。少しくらい何か分かるかもって踏んでたわたしが間違ってました。
「やっぱなんでもないです…。気にしないで、もう帰っていいよ…」
この子が、わたしに色々教えてくれるわけがないよね。しかも好きな人のことだもん。あまりベラベラ話したくもないよね。
茶々ちゃんに聞くのはバカだったと反省して、バイバイと手を振って渡り廊下を出ようと、扉に手をかけた。
その時、
「アンタ、珠理のこと、どれくらい知ってるわけ」
…背中にふりかかってくる、いつもより低い声。