ヒミツにふれて、ふれさせて。


「…え?」


思わず、振り返る。振り返って見た先には、目を伏せて眉間にシワを寄せている茶々ちゃん。
…この子のこんな顔は、珠理にフラれたと言ってきていたあの日以来だ。


「だから、珠理のことどのくらい知ってるのって聞いてんの!まさか、興味本位で聞こうとしてるわけじゃないわよね?」

「…っ」


ずっしりと、胸の真ん中を貫かれる。興味本位。そんな気持ちが、ないとは言えない。だってわたしは少し気になっているというか、疑問に思っているってだけで。

別にそれを知ったからと言って、どうなるわけでもないけど、でも…。


「…珠理のこと、なんとも思ってないなら
やめてよ。それでも知りたいって言うんだったら、あたしなんかのとこに来ないで、珠理に直接聞くべきだわ」

「……そ…、だよね」


言ってること、ドンピシャすぎる。知りたければ、最初から珠理本人に聞けばいいこと。自分以外の人間のことを、そんなにペラペラ話せないのはわたしだって同じだし。

…何を、しようとしていたんだろう、わたしは。


「…桜井芽瑚」

「…ん?」

「あんたは、珠理のことを、どれくらい知っているの」


——— 珠理について、知っていること。

何を、知っているんだろう。茶色い髪が似合うこと、黒目も少し茶色いこと、ピアスを左側だけ空けていること、身長が高いこと。

それから、優しいこと、面倒見がいいこと。

体温、匂い。


「…」


あれ、わたし、意外とあのオネェのこと、知らない。誰から見ても分かる、わたしじゃなくても分かるような情報ばかりだ。




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