ヒミツにふれて、ふれさせて。


男の人と付き合いをやめていたのも、それが理由。リョウちゃんを、できるだけ不安にさせたくない。…それだけ。

少しでも、大丈夫って言ってあげたい。それだけなの。


「…リョウちゃん、ごめんね」


もう、たたかれるのは慣れた。まだ少しびっくりするけど、リョウちゃんの気持ちも分かるから、こわいとは思わない。

…やさしいリョウちゃんを知っているから、きらいになれない。



「…ごめんね」


リョウちゃん。ごめん。ごめんね。リョウちゃんが抱えているもの、闘っているものを、分かってあげられなくてごめんね。


「…はぁ、もういーよ。俺も言い過ぎた。ごめん、めご」

「…」


そっと、抱き寄せられる腕と手のひらは、やっぱり優しかった。その手に触れて、わたしはやっと安心する。

…いつものリョウちゃんに戻った、って。


「…リョウちゃん、すき」

「うん、俺も」


触れられるくちびるは、いつもと変わらない。ずっと変わらない。優しくて、包み込むように触れる。

そのまま首筋に降りてきて、熱い息がかけられて、後ろに待ち構えていたベッドに背中から沈む。

…その時に、ハッとした。


「…リョウちゃん、ごめん、今日は…」


嬉しい。リョウちゃんに触れられるのは嬉しいよ。けど、こんな時にするのは、さすがに断りたくて。

大好きなにおいがする身体を、クイっと押し返した。


「…は?なんで?」

「…や、だから、あの…今日は…、あの…」

「それ、カンケーあんの?」

「………」



…リョウちゃん。






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