ヒミツにふれて、ふれさせて。

・・・

気がついたら、もう太陽は傾きかけていた。ただ、ぼーっとしているだけで終わった。

途中、お腹も空いて気分が悪くなってきたから、水分をとりに1時間だけ近くのカフェに入った。
けれど、なんとなく落ち着かなくて、鎌倉駅から25分くらい歩いたところで見つけた、静かな木陰にあるベンチの上に座っていた。


…もう、頰の痛みはなくなっていたけど、垂れてきた汗が鋭く染みたから、どうしたのかと思って鏡を見てみる。

すると、リョウちゃんの爪が当たったのか、少しだけ切れて血が出ていた。


でも、そんなのもどうでもいい。


「………帰ろうかな」


スマホを開いてみるけど、何も連絡は入っていない。数件の迷惑メールのみだ。こんなスマホはいらない。

…リョウちゃん、ものすごく怒ってた。もうダメかもしれない。でも、わたしといてイライラするなら、ダメになったほうが良いのかもしれない。

…でも、すきだから離れたくない。


こんな気持ち、本当にばかげてるね。


それでも、その時のわたしにとっては、とってもとっても大きい気持ちだったんだ。


「………」


ひぐらしが鳴き始めた頃に、空には金星が見えた。
スマホの充電がなくなって震えていたから、カバンから充電器を取り出してつないだ。

…その時に触れる、白い紙。


「……」


さっき、美濃珠理からもらったものだ。


「…変な人だったな」


…けど、心配してくれたな。久しぶりに、「大丈夫なのか」って、言ってもらえたな。


…あの時、わたし、きっと少しは嬉しかったんだろうな。




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