ヒミツにふれて、ふれさせて。
「…なるほどね。そーいうことがあったんだ」
「…っ」
コクン、と、うなずいてみせる。それを合図に、近海くんはフゥと息を吐いて、わたしから一歩離れた。
「俺はね、めごちゃんみたいに、真面目なタイプじゃねーから、こういうこと考えるのかもしんねーけど」
…近海くんが、吐き出す息が白い。わたしも同じように吐き出したら、空気が白に染まった。
そんな、冷たい冬の空気の中、近海くんの言葉に耳を傾ける。
「人の “すき” って、色んなカタチがあると思うんだよね。そんでそれは、人によって、好きになる相手によって色々違う」
「…」
「好きになるのに、時間がかかる恋もあれば、わりとすぐに好きになる恋もある。忘れるのが遅い恋もあれば、早い恋もある。遅いと思っていたけれど、次に好きな人ができるまで、時間がかからない恋だってある」
「…」
つらつらと、言葉を並べていく近海くん。でも、いまいちその言葉の意味がわからなくて、首をかしげてしまう。
…言っている言葉の意味自体はわかる。けど、それが今のわたしのこの状況に、どう繋がっていくのかは分からなくて。
じっと近海くんの方を見ていると、真剣に見すぎたのか、少し笑われてしまった。
「…ま、ここまでは俺の独り言だとして。珠理はさあ、あぁ見えて不器用なとこあるからな」
「…」
「でも、めごちゃんに向けている珠理の気持ちは、俺はホンモノだと思ってるよ」
——サァッと、冷たい風が流れた。わたしの止まらなかった涙は、いつのまにか止まっていて、その風によって、乾かされていく。