ヒミツにふれて、ふれさせて。


「あんなに、俺らと一緒にいても、めごちゃんが泣いてたらそっちに飛んで行くんだもん。めごちゃんのことが大切じゃなかったら、あんなことしねーよ」


ハハっ、と、近海くんはおかしそうに笑った。

でも、それは分かっている。珠理が、わたしのことを大切に思っていてくれてることくらい、分かっている。

そうじゃない、そうじゃなくて。


「…でも、サユリさんのことが大切なのに…、わたしにあそこまでやさしくしていることに、納得しないっていうか…分からないっていうか…」


ううん、やっぱり、言葉にするとなると、表現が難しい。気持ちをカタチにしていくって、こんなにも難しいことなのか。


「ははは!そうだそうだ、サユリさん、懐かしいな、そんな人いたような気がするな」

「ちょっと!笑わないでよ!」


…でも、当たり前だけど、近海くんも知っているんだ。その人のこと。茶々ちゃんは知らなさそうだったのに、さすが親友だな。


「ふん、まぁ、そのモヤモヤについては俺も少しだけ分かる気がするけど、でも、俺が伝えるんじゃ、めごちゃんのためにならないような気もするんだよな」

「…、え?」

「そーいう、珠理についてモヤモヤとしてることを、俺が解決しても意味ないでしょ。ちゃんと、2人で歩み寄って気づいて解決していかないと」

「……」


…2人で歩み寄って、気づく。

そうしたら、いつかは分かるの?
珠理と2人で考えた方が、本当に意味があるものなの?


でも、さっき近海くんは、分かる気がするって言ってくれた。共感してくれた。ということは、こんな気持ちを持つことは、他の人にも有り得ることだってことなのかな。

…特別変な気持ちじゃないってことなのかな。



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