ヒミツにふれて、ふれさせて。
「…ま、あんまこうやって2人で話しててもさ、アイツがまた怒って飛んでくるかもしんねーよ?めごに何してんのよ!つって」
「え?あはは、まっさか〜〜」
近海くんは、スマホで顔を照らしながら笑っていた。真っ暗闇の中に、カッコいい顔が映し出されていて、きれいなのに、なんだか面白い。
「いやいやー、有り得るね。多分もうすぐ気づく頃なんじゃねーのかなー?」
「ええ?」
鼻から息を吸う。ズビ、と音がしているのに気づいて、ティッシュを取り出そうとカバンを漁る。
まだ、目元には涙も付いているし、早く拭わないと。乾いてカピカピになってしまう。
近海くんのようにスマホで照らして、カバンの中を見た。カバンの奥に、ころりと転がっているティッシュとハンカチ。
…よし、これで顔を拭いて、帰ろう。近海くんにこのまま足止めくらわせておくのも、かわいそうだし。
…そう思って、手を突っ込もうとした時だった。
————グイッ
その瞬間に、力強く腕を引っ張られるような感覚があった。
ビックリして、声をあげそうになったけれど、その後すぐに映った顔を見てさらに驚いてしまって、声なんて引っ込んでいって。
「…何、勝手に出ていってんだよ…」
その代わり、その響く低い声に、心臓がびくりと動いて。
「ほらね、言った通りでしょ。んじゃ、珠理、あとはヨロシクね〜〜」
プリントが入っているのか、黒いファイルをその大きな身体に押さえつけながら、近海くんはわたしたちの前を去っていく。
…わたしはというと、今起こっていることが何なのか、よく分からないで放心状態。
え?え?と、首を回して周りをみると、そこには確かに、熱があるはずの珠理が立っていた。