ヒミツにふれて、ふれさせて。



「しゅ、珠理……?」

「…」


暗くてよく見えない。でも、この大きな身体と、いつもより熱い体温は、間違いなく珠理のものだ。

さっきまではスウェットだったのに、わざわざ着替えて出てきている。

…わざわざじゃ、ないのか。わたしが出て行ったから、追いかけてきてくれたのかな。



「…しゅ、」

「…」


名前を呼んで、謝ろうと思ったら、いつもより少しだけ強引に、グイッと涙を拭われた。

乾きかけていたけど、一粒頰に残っていたらしい。その冷たい、情けなさが詰まった水滴を、珠理はしばらくじっと見つめていた。

…表情は、いつもよりかたい。こわい。怒っている。これはきっと、怒っている時の表情。


「………泣いたの?」

「…っ」


低い声が、頭から降ってくる。急いで珠理の方を見ると、今度は反対側の目を拭われた。

…こっちも、付いてたんだ。恥ずかしい。



「…泣いてたの?って、聞いてんだけど」

「…あ…」


頰を、軽くつねられた。グッと力を入れられて、少しだけ痛みが走る。でも、それはすぐに弱められて、そのまま細い指がやさしく頰の上を滑っていった。



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