ヒミツにふれて、ふれさせて。
・・・
珠理に手を引かれたまま、もう一度ハニーブロッサムに着いた頃には、もうオジサンが買い物を済ませて帰って来ていた。
どうやら、違う近道から帰ってきたらしく、鉢合わせにはならなかったみたいだけれど。
珠理は、あれからわたしが完全に泣き止むまで、しばらく外で様子を見ていてくれた。
…何も言わずに。だけど、そのせいで、長い間、外にいさせることになってしまって。
先に入っててもいいって言っても、じゃあわたしも家に入ると言っても、許してくれなかった。
だから本当に、熱が上がっていないか心配でたまらない。
「…あれ?なに、2人で出かけてたの?」
家にいるはずのわたしたちが一緒に戻ってきたのは、やっぱり不自然だったようで、首を傾げられてしまった。
「…あ、ごめんなさい…、わたしが…」
「星を見に行ってたのよ。アタシもずっと寝転んでて、外の空気吸いたくなっちゃって」
「…っ」
事情をわたしから説明しようとしたその時、上から被せられる、いつもの声。その時に、また繋がれた手がギュッと締まった。
…わたしが出て行ったことは、オジサンには内緒にしてくれているってことなのかな。わたしが、全部悪いのに。どうして…。
「そうか。でもしゅーくんは熱あるんだから、ほどほどにね。めごちゃんまで風邪ひいちゃったらどうするの」
「ふふふ、ごめんごめん。でももうほんの微熱だから。ほらめご、夕飯できたみたいよ、一緒に食べる準備しましょう」
オジサンのお叱りも軽く流して、戸棚からスプーンやフォーク、木のお皿を出している珠理。
繋がれていた手はいつのまにか離れていたけれど、取っ手の赤いおたまを渡されて「よかったら、お皿に盛ってくれる?」と笑ってくれた。
わたしは言われた通りに、出来上がったホクホクのポトフを、バランスよくお皿に盛り付けていく。
その間にも、オジサンはバジルソースのサラダを作り上げて、手作りのパンも並べてくれた。
…なんて、オシャレな夕飯なんだろう。