ヒミツにふれて、ふれさせて。
全ての料理がそろったところで、みんなで席について、「いただきます」と手を合わせる。
…昔からの顔なじみのオジサンと、いつもは学校でしか会わない珠理。
その2人と、こうして一緒に食卓を囲っていることが不思議だった。
熱い湯気が立ち上がっていくポトフ。優しい味がした。その暖かい空気が、泣きはらした目に染みて、少しだけ、さっきのことを思い出す。
…珠理は、誤解を解いてから帰ってと言っていた。
でも、それはどういうことなのだろう。
「めごちゃん、お口に合うかな?」
色々と考えを巡らせていると、にっこりと笑ったオジサンがわたしの方を見ていた。
わたしは、口の中に残っていたウィンナーをゴックンと飲み込んで、笑い返す。
「はい、とっても美味しいです。今まで食べたポトフの中で、一番すき」
これは、本音。やっぱり、予想したよりも美味しかった。あんなに美味しいケーキを作る人なんだもん、料理は上手に決まってるよね。
「やさしい味がします。すごく、ホッとする」
「そうか〜!それはよかった!」
わははは、と、大きく口を開けて笑うオジサン。わたしも、わたしの言葉で喜んでくれてうれしい。
「でもね、めごのお弁当も、毎日すっごく美味しそうなの。可愛いし」
珠理が、サラダを自分の小皿に入れながら、すかさず話題を被せてきた。その話に、少しだけドキッとする。
「へぇ。めごちゃんが作ってるの?」
「いえ…わたしじゃなくて、わたしの母が…。色々、料理とか好きみたいで」
「へぇ〜〜!そうなの!」
オジサンがまたビックリ反応を示している中で、珠理はわたしと目を合わせて、薄く笑う。