ヒミツにふれて、ふれさせて。
「…これで、誤解は解けた?」
自分の中でごちゃごちゃとしていた、得体の知れないものが少しだけ分かってホッとしていると、珠理はやさしい顔をしてわたしの方を見た。
その顔を見ると、なぜかもう一度胸がキュッとしまったけれど、「うん」と小さくうなづいて見せた。
「アタシが小学校高学年くらいまでだったかしら。サユリと一緒に住んでいたんだけど…。色々あって、中学入学前からは、このオジサンのところでお世話になってる」
「……。そっか…」
色々あったってことは、もうこれ以上聞くのはやめておいた方がいいような気がする。今、お母さんのことについて話してくれているだけでも大きなことなのに、あまりペラペラと話してもらうことじゃない。
「…珠理、話してくれてありがとう。オジサンも、ありがとうございます」
…それでも、わたしが誤解しないように、1つ1つをこうやってね丁寧に接してくれること。それも、珠理の大きなやさしさだからだと痛感しているよ。
でも、どうして珠理が、わたしひとりのために、ここまでしてくれるのか。
その疑問については、まだまだあまり分からないままだ。
・・・
誤解も解けて、美味しいご飯も食べ終わって。
珠理がお風呂に入っている間に、オジサンの片付けを手伝っていると、「家まで送っていくよ」と言ってくれた。
一度は断ったけれど、「暗いし、心配だから」と付け足しで言われてしまったので、謝って言葉に甘えることにした。
時計を見ると、針は8時を指していた。
珠理は、お風呂からあがると、スウェットに着替えて、タオルで髪を拭きながらリビングに戻ってきた。
…その色っぽい空気に、少しだけ見惚れてしまう。そのくせ、わたしの顔を見ると、
「めご、これから帰るわよね」と、オネェ全開の口調で近づいてくるもんだから、本当に変わった生き物だと思う。