ヒミツにふれて、ふれさせて。
「…ありがとう」
珠理のこぼした言葉と笑顔と一緒に、こめかみあたりの髪の上に、何かが乗っかったような感触がした。
少しだけ、熱いもの。
それが離れていった時に、ようやくそれを理解して、思わずバッと熱が顔を覆っていく。
「……約束ね」
「〜〜っ!!」
恥ずかしすぎて、逃げてしまいたい。
リョウちゃん以外の人に、こんなことをされたのは初めてだ。
なんなの、この人。本当は外国人かなにかなんじゃないの。
「わ、わかったから…っ」
絶対に、今の顔を見られたくなくて、マフラーを巻き直した。そして、そのまま珠理に背を向ける。
慌ててドアを開けると、一気に冷えた空気が入り込んできて、わたしたちを縛るように包み込んでいく。
…なんだか、この数時間で、色々なことがありすぎたな。でも…。
「…じゃ…、今日は、色々とありが、とう…」
やっぱり、ふれたのは、珠理のやさしさだったから。
振り返って、お礼を伝える。
「また、月曜ね」
バイバイと手を振ると、珠理は一瞬びっくりしたような顔をして、すぐににっこりと笑ってくれた。
「またね、めご♡」
そう、いつも通りの、珠理に戻った姿で。