ヒミツにふれて、ふれさせて。

・・・


リョウちゃんの時と違って、約束の日は思ったよりもすぐにやってきてしまった。

あれから珠理はすぐに回復したらしく、月曜日には学校に戻ってきていた。しばらくマスクマンだったけれど、金曜日には、いつも通りの珠理になっていて…。

わたしはというと、先週起こったことがいつまでも頭の中に残っていて、ひとりでグルグル状態。あいさつくらいはするけど、うまく目を合わせられないでいた。



「えっ!?ミノくんとお出かけっ!?」

「ちょっ…、瀬名!」


親友に、デート(?)の件を伝えることができたのは、金曜日の今日。パンケーキを目の前に控えた時だった。しかも放課後。

瀬名があまりにも大きな声をあげるもんだから、クラスにいた人の視線が集まってきた。ヒソヒソ話も聞こえる。

…もう、ほんとやだ…。

部活中ってのが、せめてもの救いだった。残っている人たちも少なくて、ひとまずホッとする。この先も、変なこと言われないといいけど…。


「ちょっと、何それ。いつの間にそんなことになってたのよ」


慌てて声のボリュームを落として、コソコソと話す瀬名。
少しはマズイと思ったんだろう、もうずっとその声で話しててほしい。


「…言うの遅れてごめん…。実は、1週間ほど前から…」


ごにょごにょと、思わず口の中で話しているような、そんな発音も声量もない声で呟きながら、この間起こったことを話す。

瀬名は手のひらを口元に当てて、目を見開きながら聞いていたけど、思ったよりも冷やかすことなく、わたしの手を握り返して言ってきた。



< 174 / 400 >

この作品をシェア

pagetop