ヒミツにふれて、ふれさせて。


「…ふふ」


色々と考えを巡らせていると、目の前にいた瀬名が笑った。「なに?」と思わず聞いてしまったら、瀬名はううんと首を横に振って、頬杖をついたままニコニコと笑う。


「なんかめご、大変そうだけど、楽しそう。そんな顔、久しぶりに見ちゃった。だから、嬉しくて」

「…」


そんな顔って、どんな顔だよ。って、思ったけれど、瀬名がやさしく笑いかけるもんだから、反論する気にはなれなかった。


「まぁ、どんなめごだって、大丈夫だよ。明日は、うんと楽しんでおいで」


…握ってくれる手が温かかった。笑ってくれる顔が、声が、やさしかった。
瀬名だって、珠理とおんなじだ。わたしの周りは、みんな、みんなやさしい。




・・・


土曜日は、午前中の10時集合になった。お昼はどうする?という話になったけれど、パンケーキ食べるならお腹いっぱいになるからってことで、特別食べないことになった。

もしお腹が空いた時は、そのときって感じ。あんまり細かくプランは立てなかった。

わたしは結局、朝の7時過ぎに起きて、そこから洋服選び。散々迷った挙句、デニムのスカートに白のニット、その上にグレーの上着を羽織るっていう無難な格好にしてしまった。

でも、去年買った秋色のベレー帽を発見したから、それを被って、せめてものお洒落。

…デートって言ったって、すぐ近くなんだし、このくらいでいいよね。


10時集合って言っても、珠理がわたしの家の近くまで来てくれるらしくて、わたしはそれまで家で待機。

珠理からは9時50分頃にメッセージが入った。「今、長谷駅に着いたわよ〜」という内容だった。…スタンプは、音符が飛びまくってるウサギのスタンプだった。


…どれだけ楽しみにしてるの、この人。


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