ヒミツにふれて、ふれさせて。



お母さんとかに見つかっちゃうと面倒くさいから、わたしは家の外に出て待っていた。

運動靴にしちゃったけど、大丈夫だよね。変じゃないよね。むしろ、パンプスとかにして、足を痛めたほうが迷惑かかるしダサい気がする。

…そのほうが、かわいいけど。


でも、相手は珠理だし、そんなに可愛いにこだわる必要はないはずだ。変な格好さえしていなければ、それでいい。


そんな、ぐるぐると、色々な思考が生まれていって、珠理が来るまでの間も頭がぱんぱんだった。



「…めご」

「…!」



だから、突然に声をかけられた時は、肩が大きく、ピクリと上がった。

思わず、勢いよく声がした方を見てしまった。
そこには、確かにいつも学校で会っている男の子が立っていて。

わたしの姿を見た途端、笑った。


「はは、何ビックリしてるの、めご」

「…」


…その、笑った顔に、思わず声も出てこない。

黒いスキニーに、白のビッグニットセーターに、カーキっぽいロングコーディガンを合わせている、珠理。

…やっぱり、オシャレ。高校生には見えない。大学生みたい。

…そして、オネェにも見えない。


わたしはやっぱり恥ずかしくなって、パンプスを履いて、それに合う服を着れば良かったとも思ったけれど、珠理はわたしのベレー帽に手を置いてニッと口角を上げた。


「…白のニット、被ったね」

「…っ」


…そんな、嬉しそうに言わなくても、それ以外はまったく被ってないし。ニットの素材だって全然違うし。むしろ色しか合ってないし。

でも、そうやって珠理が笑うから、これで良かったかなとも、少しだけ思った。


…笑われなくてよかった。やっぱり、無難を選んで良かった。



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