ヒミツにふれて、ふれさせて。


ありがとうってことは、きっとデートに来てくれてありがとうってことなのだろうな。
わたしが行きたいって言ったから来ているだけなのに、バカな人。

小さく首を左右に振ると、もう一度小さく微笑んで、その大きな手のひらは頭から離れていった。



「お待たせいたしました〜!」

そのタイミングを狙っていたかのように、わたしたちが注文したパンケーキは目の前に登場した。


それを見て思わず、珠理とふたりで「わあ〜!」と声をあげてしまった。

わたしの抹茶とは、生地に抹茶が練りこんであって、その上に黒蜜をかけて食べる。バニラアイスと、小豆も少しだけ乗っていて、とっても美味しそう。

珠理のも、上にバナナのコンポートのようなものが乗っていて、シナモンがふりかけられている。

「美味しそう…。分厚い、見た目もフワフワだし、色合いも完璧だ…!」

思わず、そんな言葉が口から漏れ出して、スマホで何枚も写真におさめてしまう。

前を見ると、珠理も同じ。角度を変えながら何枚も撮っていた。…ほんと、そーいうとこ、女子だよね。


「きゃ〜!めごとパンケーキなんて最高の組み合わせじゃないの〜!めご、ちょっとこっち向いてっ♡」

…って、わたしかよ。そんなもの撮られてたまるか。無視して早く食べちゃおう。


「ねぇ、めご聞いてるの!?」

「あ〜もう、うるさいよ!いい加減にしないと、あんたの分のバナナ全部食べるからね!!」

「きゃ——!それはやめて!残酷!」


うるさいオネェを封じ込めて、そのままひとくちサイズに切って、口の中に入れる。すると、フワフワの生地と優しい甘さが口の中に広がっていった。

…おいしい。これは、お店の外見だけじゃなくて、料理も絶品だ。こんなお店が近くに隠れていたなんて、知らなかった。まさに灯台下暗し。



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