ヒミツにふれて、ふれさせて。
「…珠理は、今まで付き合って来た人たちとも、こうやって一緒にケーキ食べに行ったりした?」
「…え?」
「………」
………ん?
わたし、今、なんて言った?
何気なく発した言葉だったけれど、自分の声が客観的に聞こえた後に、どうしてそんな質問をしてしまったのかが分からなくて。
視線の先でびっくりしたような顔をしている珠理を見て、一気に後悔が押し寄せてくる。
…あぁ、間違えた。質問の内容間違えちゃった。こんなこと聞いてどうするの。
「…ご、ごめん…。今のナシ…」
なんだか急に、自分がへんな女に思えて来て、やめた。なんださっきの質問。本当にちょっと30秒前に戻りたい。
「…行ったこと、あるわよ」
「………」
頭から降りかかってくる言葉に、心臓がどきりとした。
…こんなへんな質問に、そんなに真剣に答えなくていいのに。ていうか、そうだろうなっていうのは、知ってたし。
茶々ちゃんとも、付き合ってたの知ってるし。
「そっ…か」
なぜか、目を合わせられなくて、下を向く。
わたしだって、リョウちゃんとはしょっちゅう食べに行っていたのに、変な感じ。もっと言えば、ハニーブロッサムなんか、本当に両手じゃ足りないくらい行っているのに、変な感じ。
珠理も、それと同じなのに。
わたしがなぜか顔を上げられなくて、ひたすらパンケーキを切っては食べ、切っては食べを繰り返していると、珠理に背中をポンとたたかれた。
それを合図に少しだけ顔を上げると、その先で珠理は眉毛を下げてやさしく笑っていて。
「…でも、めごと過ごすのが、いちばん楽しいわよ」
そう言ってくれた。
別に、そう言ってもらいたいわけでも何でもなかったけれど、その大きな手のひらを感じると、ホッと力が抜けていって。
ちょっとだけ、安心した。