ヒミツにふれて、ふれさせて。
その話を、珠理は黙って手も動かさずに聞いていた。笑わないで、真剣に。
そして、わたしが一瞬目を向けて視線を合わせると、珠理はまた笑った。
「アタシは、めごだから仲良くなりたいと思ったのよ」
…そう、嬉しい言葉を残して。
わたしだから、仲良くなりたいと思った。
…なぜ?そんなに、魅力があるわけでもない。どちらかといえば、あんなキッカケさえなければ、珠理となんて関わらないで卒業していく人間だったはずなのに。
それでも、珠理がそう思ってくれた。その理由はなんだったんだろうと、少し気になってしまう。
でも、そんな質問をする時間さえ与えずに、珠理は明るく空気を変えて、
「ねぇ、この後時間あるけど、どこか別のところにも遊びに行く?」
そんなことを、聞いてくる。
別のところ?うーん。
「たとえば?」
「なんでもいいのよう、そんなの。ぷらぷらお散歩とか。だって食べて終わりなんて、もったいないじゃない。せっかくのデートなのに」
「…っ!」
確かにそうだけど、その「デート」というキーワードをいちいち入れてこないでほしい。強調しないでほしい。恥ずかしいから。
「…じゃあ、あそこ行こうよ。長谷寺」
「長谷寺?ってあの、お地蔵さんがいるところの?」
「そう」
…だって、この辺りと言えば、鎌倉の大仏とか長谷寺くらいしかないし。それに、実を言えば、長谷寺にあまりというか、ほとんど行ったことがないのだ。
地元民なのに。
小さい頃はそれなりに地元散策とか小学生のまち探検とかで行ってたみたいなんだけれど、まったく記憶にないのが本当のところ。
「幸せ地蔵探しに行こ。なんか、観光地行ってみたい気分」
「いいわよ〜、お安い御用」
それまでに並んでいるお店とかでいいところがあったら、入ろう。そこで買い物をしながら時間をつぶしたら、ちょうどいいくらいになりそうだし。
それを珠理に伝えたら、快く承諾してくれた。