ヒミツにふれて、ふれさせて。


「…うん、決まりね」

「…?」


決まり…? なんの…?
ていうか、決まりってなに…。


珠理の言っていることがよく分からなくて、頭の中がハテナでいっぱいになっていると、珠理は何やら店員さんを呼んできた。

そして、わたしが持っていたブレスレットを「ちょっと貸して」と言って、店員さんに見せる。


「すみません、コレひとつください。それから、そのまま付けていきたいんですけど、お代だけ払うことはできますか?」

「………」


…え!?!?
な、なななな何を言ってるの珠理!?


「はい、できますよ。では、先にお支払いよろしいですか」

「はい、お願いします」


思わぬことが起きてしまって、オロオロとしている間に、珠理はそのまま店員さんと一緒にレジに向かっていく。

それをわたしは慌てて追いかけて、珠理の上着を思わず掴んでしまった。


「珠理!?わたし…っ、い、いらないよ、大丈夫だよ…!」

「ん?めごはあのブレスレットが一番似合うと思うわよ。それに、学校でも付けられるしね」

「そおおおいう意味じゃない!」


わたしは、欲しかったら自分で買うから要らないと言っているのに!

でも、わたしがどれだけ隣で騒いでも、珠理はとなりで涼しい笑顔を店員さんに向けながら、ムシ。
このオネェ野郎感じ悪いなと思ったけど、そんなことを言ってる場合でもなく。

サラリとお金を払って、そのブレスレットを受け取っていた。


「めご、手出して」

「…っ」


お店を出てそう言われた時には、決して安くないモノを、珠理はそのまま手に持っていて。
わたしのダラリと垂れた腕を掴んで、自分の方に向けた。

そこにはめられていくのは、キラキラと光る、ピンク色の桜貝。


「うん、やっぱりめごには、この色の桜貝が一番似合うわ」

「…」


…いらないって、言ったのに。どうしてこんなことをするのかな、このオネェは。



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